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お子さんにおしゃぶりは使用されていたでしょうか?
また、おしゃぶりに対してはどのようなイメージをお持ちでしょうか?
おしゃぶりを使い始める理由として、
「赤ちゃんだし、何となく」
「赤ちゃんらしくてかわいいから」という軽い気持ちで使われている方も多くいらっしゃいます。
また、赤ちゃんが泣いたときに泣き止ます手段として、おしゃぶりを使用する方もよくお見かけします。
しかし、使っていくうちにいざやめさせたいと思っても、
「おしゃぶり無しには寝てくれない」
「本人が離さない」
「これがあると静かにしてくれる」と本人にとってもなくてはならないものになってしまいます。
一時期、「おしゃぶりは舌やあごの発達を助けて鼻呼吸を促す」と言われていたこともありました。しかし、これに対しては、はっきりとした医学的根拠はありません。
乳児突然死症候群(SIDS)を防ぐとして推奨していた米国小児科学会も、最近ではそのようなフレーズはほとんど見かけなくなりました。
また、おしゃぶりをしていないのに改めて使用をおすすめするということはありません。
おしゃぶりをすすめる場合があるとしたら、低体重で生まれた子などの場合などでしょう。
哺乳のトレーニングとして産科・小児科から使用を勧められているケースがあります。
そのような場合を除いては、歯科の分野からはおしゃぶりをおすすめはしません。
おしゃぶりは、指しゃぶりほどではないにしても、おしゃぶりを長い間使用すると乳歯のかみ合わせに悪い影響が出てしまいます。
日本小児科学会や日本小児歯科学会なども「おしゃぶりは出来るだけ使用しない方がよい」との意見が発表されており、寝ている時に使ったり、長期間使用することで歯のかみ合わせが悪くなるなどの悪影響が重視されています。
しかし、子育て中は保護者の方にとっても初めてのことだらけで、赤ちゃんが泣くとどうしていいかわからず困ったり、公共の場などで泣き止ますのに使うと助かる方もいらっしゃるでしょう。
お子さんを育てている保護者の方からすると、ありがたい道具です。
口の中の発達やかみ合わせを考えると、使用をおすすめはしませんが、泣いている赤ちゃんをあやすための一つの手段として、おしゃぶりを上手に使うことは悪いことではありません。
使い過ぎると弊害はありますが、もし使うのであれば次の点に必ず気をつけましょう。
①ことばを発したり、覚えたりする1歳過ぎまでにおしゃぶりのホルダーを外して、常時使用しないようにしましょう。
②遅くとも2歳半までにはおしゃぶりを卒業しましょう。
③もしも4歳以降になってもおしゃぶりが続く場合は、小児科の先生にご相談しましょう。
通常のかみ合わせは、上の歯が下の歯に覆い被さる形で上下の歯がかみ合っていますが、おしゃぶりを続けていると、2歳で「開咬」というかみ合わせに高い確率でなってしまいます。
開咬とは、前歯に上下方向の隙間ができる不正咬合のことで、奥歯でしっかりかんだ際にも上下の前歯が噛み合わない状態のことをいいます。おしゃぶりをくわえている時間が長いと、段々と上下の前歯の隙間が開いてきて開咬になっていきます。
5歳まで続けると、開咬はより悪化してしまいます。
また、おしゃぶりを使用している子どもは、使用していない子どもと比べて、出っ歯や開咬、乳臼歯交叉咬合(乳歯の奥歯のかみ合わせが上下反対に咬んでいる状態)になる確率がとても高く、かみ合わせに大きな影響を与えます。
1歳半、2歳でこのようなかみ合わせであっても、おしゃぶりを止めることでかみ合わせの異常は改善しやすくなります。しかし、乳歯の奥歯が生えそろう2歳半、3歳過ぎまでおしゃぶりを使用していると、かみ合わせの異常が残ってしまいます。
特に、乳臼歯交叉咬合というのはあごにズレたかみ合わせになっている状態です。
子どもは常に成長をしていますが、それはあごも一緒です。
成長を続けているあごの関節がずっとズレた状態になっていると、最終的には左右であごの長さが変わってしまいます。
交叉咬合は早期に治さないと、見た目だけでなく、顔のかたちにまで影響を及ぼします。
子どもの骨は柔らかく、機能もまだ確立していません。
最も著しく成長する乳幼児期に、おしゃぶりによるゴムやシリコンのわずかな圧力が継続的にかかることで、その周囲の軟組織や骨の成長に影響してしまいます。
最近では、おしゃぶり自体が矯正装置のような働きをしてしまい、成長期の顎や歯列を変形させ、舌や口唇などの軟組織まで偏位、変形させてしまう可能性があるとまで言われてきています。
おしゃぶりを長い間使っていると、最初は軽度の歯列の変形、あごの変形を起こします。
そしてそれが習慣化すると、口唇の変形、低位舌(舌の位置が通常より低い位置にあること)、舌が変なふうに動くようになって癖づいてしまったり、顔の軟組織がズレてきたり、変形したり、その他にも悪い癖が定着してしまいます。
そうすると、よく噛み砕くことができなくなったり、正しい発音ができない、鼻呼吸でなく口をぽかんと開けて口呼吸をしてしまう、など子どもの一生にかかわる重篤な症状を引き起こすことが示されています。
さまざまな事情により、おしゃぶりを使うことはあるかもしれません。
そのときは使い方や使用時間の長さに気をつけ、長時間同じ状態で力がかかりつけるようなことを避けることが大切です。
5~6ヶ月以降のお子さんは、なんでも口へ持っていってしゃぶります。
これは目と手を一緒に動かすことを学んでいるだけでなく、いろいろなものをしゃぶって形や味、性状を学習しています。
このような時期におしゃぶりを使用していると、手でつかんでも口に持っていくことができません。そのため、しゃぶることによりいろんなものを学ぶ機会を逃してしまうことになります。
また、保護者の方に対して声を出したり、自分から声を出したりもできません。
おしゃぶりは一度使用すると長時間にわたって使用する傾向がありますので、せっかくの発達のチャンスを失ってしまうことにもなります。
おしゃぶりを使用している間も、おとなしいからと言ってそのまま放っておくのではなく、できるだけ声かけをしたり、一緒に遊ぶなどのお子さんとの触れ合いを大切にしましょう。
子どもがして欲しいことや、したいことをさせて満足するように心がけることも重要です。
おしゃぶりだけでなく指しゃぶりも習慣付けないようにするには、このようなことに気をつけていきましょう。
また、一度使用すると、やめさせるタイミングがわからない方もいらっしゃるかもしれません。
おしゃぶりを寝かしつけの際に使用している場合は、頻度も高く、どうしても長時間使用することになってしまいます。そして、寝ぐずりがピークになる1歳までに常時使用をやめるのは大変難しいことでしょう。
お子さんの個人差あるでしょうが、使用するときは使っている時間や使用をやめるタイミングをあらかじめ、ある程度は決めておくことも重要です。
子育てに忙しい毎日で、つい気が回らなくなることもあると思います。
もしおしゃぶりを使用していても、赤ちゃんを一人でほおっておくのではなく、話しかけたり遊んであげることを心がけてみたら、おしゃぶりもそんなに使うことなく卒業できるかもしれません。
おしゃぶりを多用してさまざまな変形や悪い癖が身に付く前に、おしゃぶりについての正しい知識を知り、適切な使用を心がけてかみ合わせやその他の機能が悪くなることを防ぎましょう。
長い一生でみると、おしゃぶりを使用しているのはほんの一時期ですが、その時期にかたちづくられる顎顔面の骨格や、噛んだり、食べたり、飲み込んだりする機能は一生のものです。
おしゃぶりを使用していて歯並びにちょっと不安があるという方は、気軽に一度ご相談ください。