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「外科手術を受ける前に、歯科でむし歯の治療を済ませるように言われた」という話を聞いたことはありませんか?実は、むし歯だけではなく、外科手術の前には歯科治療が必要になることがよくあります。それはいったいなぜなのでしょうか?
今回は、外科手術の合併症と口腔ケアの関係について詳しく解説します。
【手術前に注意すべき口腔内の細菌とは?】
口の中に細菌がいることは、なんとなくはご存知な方も多いのではないでしょうか。
実は、口の中には数百種類の細菌が存在しています。健康な状態ではバランスが保たれていますが、むし歯や歯周病があると、細菌が血流に乗って全身に広がるリスクがあります。
特に、以下のような細菌には注意が必要です。
・歯周病菌(P. gingivalis、T. forsythia など):血流に入り、心臓病や糖尿病を悪化させる可能性がある
・むし歯菌(S. mutans など):手術後の免疫低下時に感染を引き起こすことがある
・口腔内常在菌:手術後の誤嚥性肺炎や創部感染の原因となる
以上のように、口の中にいる細菌をできるだけ手術前に少なくしておくことが様々なリスクを減らすことにつながるのです。
【もしグラついた歯があったなら】
グラついた歯があるまま外科手術をしてしまうと、手術中の気管挿管(麻酔時に管を挿入する処置)で歯が折れたり、誤嚥してしまうリスクがあります。特に、全身麻酔を伴う手術では、次のような影響が考えられます。
・抜けそうな歯が気管に入る危険性
・手術中の歯の破損による誤嚥や窒息のリスク
・術後の感染症リスクの増加
このようなリスクを回避するためにも、グラついた歯がある場合、事前に歯科医師の判断を仰ぎ、抜歯を検討する必要があります。
【手術前に受けるべき歯科治療とは?】
手術前には、以下のような歯科治療が推奨されます。
・むし歯治療:進行した虫歯は感染源になるため、できるだけ治療を済ませる
・歯周病治療:歯周病があると術後感染リスクが高まるため、クリーニングや治療を行う
・グラついた歯の処置:必要に応じて抜歯や固定処置を行う
・口腔清掃指導:術前の口腔ケアを強化し、細菌数を減らす
【手術前の歯科治療の具体的な流れ】
では、手術前に歯科治療を受ける場合は具体的にどのような流れになるのか示していきましょう。
心臓の手術を受ける予定の患者さんが、術前検査で重度の歯周病が見つかったケースについてご説明していきましょう。
歯科治療を行わずに手術を受けた場合、細菌が血流に入り感染性心内膜炎を引き起こすリスクがありました。そのため、術前に歯周病の治療を行い、感染リスクを減らしたことで、無事に手術を成功させることができます。
このように、手術前の口腔ケアは命を守る重要な役割を果たします。
【日頃の歯科定期検診と治療のメリット】
日頃から定期的に歯科検診を受け、適切な治療をしておくことで、手術前に慌てる必要がなくなります。
具体的には
・むし歯や歯周病の早期発見・早期治療ができる
状態にもよりますが、むし歯や歯周病の治療というものは1日で治せるものばかりではありません。状態によっては長期にわたって治療をする必要性があるものも、もちろんあります。
ですので、日頃からのこまめなケアが重要になってくるのです。
・手術前に追加の治療が必要になるリスクを減らせる
全身疾患の手術前というのは、からだの状態も悪く、歯科医院にこまめに通う時間や元気がない場合もあるでしょう。歯科医院での治療がすでに終わっている状態であれば、手術前にわざわざ追加で治療する必要もなくなりますので、スムーズに手術を受けることができます。
・全身の健康を維持し、手術後の回復を早める
特に、持病がある人や高齢者は、定期的な歯科検診がより重要になります。
細菌感染のリスクも減らせますし、術後の回復にも影響してくることでしょう。
【手術前の口腔ケアの具体的なチェックリスト】
手術前に口腔環境を整えるために、以下の項目をチェックしましょう。
・むし歯がないか確認する
・歯周病の進行状況をチェックする
・グラついている歯がないか確認する
・詰め物や被せ物の状態をチェックする
・口腔内の清掃状態を確認し、必要に応じてクリーニングを受ける
・舌の状態を確認し、白い苔(舌苔)が多い場合は適切なケアを行う
・口臭の原因を特定し、適切な対処を行う
これらのチェックを受けることで、手術時のリスクを最小限に抑えることができます。
【どんな人が特に注意すべきか?】
特に以下のような人は、手術前の口腔ケアを徹底する必要があります。
・高齢者:免疫力が低下しており、感染症にかかりやすい
・糖尿病:血糖コントロールが悪いと、歯周病が進行しやすい
・心臓病:口腔内の細菌が心臓に影響を与える可能性がある
・がん:抗がん剤治療や放射線治療により、口腔内の健康が悪化しやすい
・透析:免疫力が低下しているため、感染症のリスクが高い
【歯科医院でのチェック項目】
歯科医院では、以下のようなチェックを行います。
・歯周ポケットの深さの測定(歯周病の進行度を確認)
・詰め物や被せ物の状態確認(破損や隙間がないかチェック)
・ぐらついた歯の確認(必要なら固定や抜歯を検討)
・口腔内の細菌量の評価(クリーニングや指導を実施)
・かみ合わせのチェック(不適切な咬み合わせがある場合は調整)
【手術後の口腔ケアの重要性】
手術後は免疫力が低下し、感染症のリスクが高まります。そのため、手術後も口腔ケアを徹底することが重要です。
・毎日の歯みがきを丁寧に行う
・口腔内の保湿を心がける(唾液の分泌が減るため)
・やわらかい歯ブラシや低刺激の歯磨き粉を使用する
・食後はしっかりうがいをする
【手術後に起こりやすい口腔トラブル】
手術後は以下のような口腔トラブルが起こる可能性があります。
・ドライマウス:唾液分泌が減少し、口腔内が乾燥する
・免疫低下による感染:口内炎や歯周病の悪化が見られる
・食事のしにくさ:術後の体調不良により、食事がしづらくなる
【回復を早めるための口腔ケア方法】
手術後の回復を早めるためには、以下のようなケアを行うと良いでしょう。
・保湿ケア:口腔用保湿ジェルやスプレーを使用する
・食事の工夫:やわらかく、飲み込みやすい食事を選ぶ
・口腔体操:舌や頬を動かし、唾液の分泌を促す
【手術前の歯科治療が推奨される具体的な病気】
手術前の歯科治療が特に推奨される病気には、以下のようなものがあります。
手術前の歯科治療を徹底し、安心して手術に臨みましょう。
【OCEAN歯科からのメッセージ】
全身の健康を守るためにも、日頃からのこまめなお口のケアが重要なことはご理解いただけたでしょうか。
いきなり外科手術が必要となっても慌てなくていいように、こまめな歯科医院での定期検診や歯科治療をおすすめします。手術に備えてだけでなくとも、常にお口の健康を守れるようにしておきましょう。