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歯ぎしりや食いしばりは小さな子どもから大人まで、あらゆる年齢の人に起こる症状です。
動物にもあるといわれており、ご自宅で飼っている犬も歯ぎしりをしているのを聞いたことがあるという人いるかもしれません。
ご自分で歯ぎしりをしていると自覚している人は少ないかもしれませんが、思い当たる症状はあるのではないでしょうか。
例えば、朝、目が覚めたときに奥歯が痛かったり、起きたときに顎が痛みを感じたり、だるかったり、なんとなく頭痛がしたり肩こりが続くというような症状も歯ぎしりをしたことによる症状です。また家族から寝ているときにギリギリ、ガリガリと歯ぎしりする音が気になると指摘されたりすることもあるかもしれません。多くの場合は、自分では意識せずに歯を強く食いしばっている状態です。
専門的には、広い意味での歯ぎしりのことを「ブラキシズム」といいます。
近年、このブラキシズムの症状がある人は増えているともいわれていて、気がつかないうちに歯や顎に悪い影響をもたらしています。
【ブラキシズムのいろいろ】
一般的には歯ぎしりというと、夜寝ているときのギリギリ、ガリガリとした歯がこすれる音が出ている状態を思い浮かべるかもしれませんが、実はそれだけではありません。
音が出ないものや昼間起きているときにしてるものもあるのです。
音が出るほどの歯ぎしりなど、寝ているときのブラキシズムを心配している人がほとんどかもしれませんが、起きているときのブラキシズムも問題なのです。
【ブラキシズムってなに?】
ブラキシズムとは「歯ぎしりや食いしばりなどの顎の筋肉活動」のことをまとめて呼んでいます。
誰にでも起きている症状なのです。
睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠などのリズムがありますが、そのリズムによってブラキシズムは起きるので、歯ぎしりなどをすること自体が問題ではありません。
大事なのはそれが正常の範囲内であるのか、病気なのかを見極めることです。
ストレスなどさまざまな要因によって、ブラキシズムの程度というのは変わってきますので、まずは治療を必要とする状態なのかを診断する必要があります。
【ブラキシズムの種類】
(1)寝ているときのブラキシズム
寝ているときのブラキシズムには大きく3種類に分けることができます。
治療の必要があるブラキシズムでは、起きたときに歯が痛い、口が非常に開けにくい、歯に圧迫感がある、歯が浮いた感じがするなどの症状があげられます。
ご自分がどれに当てはまるかを考えていきましょう。
①グラインディング
主に寝ているときに上下の歯をこすり合わせることです。
一般的にはこれを歯ぎしりと言うことが多く、最も多くの人にみられます。
家族から指摘されたり、歯科医院で歯のすり減りを指摘されることもあります。
上下の歯を強くかんだ状態で、横に滑らせてこすり合わせるため、歯に大きなダメージを与えます。歯が削れ、大きく歯がすり減って平らになるという特徴がみられます。
②クレンチング
上下の歯をギューッとかみしめることで食いしばりやかみしめとも言われます。
グラインディングと違い、横にこすり合わせることはありません。
力を入れたときに食いしばるように、寝ているときにも力が入ってしまうことをいいます。
音が出ないので、周りの人は気づかないことが多いです。
朝起きたときの顎の痛みやだるさで気づくことがあります。
③タッピング
上下の歯をぶつけ合って、カチカチという音を出します。
比較的頻度は少ないものです。
(2)起きているときのブラキシズム
上下歯列接触癖(TCH)
起きているときに起きる症状です。
顎関節症にも深い関わりがあります。
通常、上の歯と下の歯の間には2〜3㎜の隙間があり、リラックスした状態では上下の歯というのは合わさりません。上下の歯が接触するのは会話や食事の時だけで、24時間中平均17.5分とほんのわずかな時間です。
緊張していたり、ストレスが溜まっているときは上下の歯が隙間なくかみあわせていることがあります。かむ筋肉が常に緊張した状態になり、それが長い時間続くととても疲労してしまいます。
この癖のことで歯ぎしりの一種です。
クレンチングと違い、強い力でかみしめるのではなく、日中に食事などをしていないときもずっと弱い力で上下の歯が接触している状態です。パソコン作業や運転中であったり、裁縫など細かい作業をしていたり、料理などのときもかみしめている可能性があります。
日中、ご自分で少し意識してみることで、無意識にしていることに気づくかもしれません。
【ブラキシズムの悪い影響】
ブラキシズムは、歯・歯肉(歯ぐき)・歯を支える骨とその周囲の組織にさまざまな影響と弊害を及ぼします。
歯や歯を支える骨などが受け止めるかむ力というのは、自分の体重くらい大きな力です。
ブラキシズムの場合、その大きな力が持続的に加わるため、硬いものを食べるときのように一瞬だけ強い力がかかるより、ずっと大きな影響が出てしまいます。
特に音が鳴るほどのブラキシズムの場合は、普段かみあわせている力とは比べものにならないくらい強い力がかかっているため、歯の表面が削れてくることがあります。
歯は年齢を重ねるごとに削れてくるものですが、その速度がとても速いのが特徴です。
歯の一番表層にあるエナメル質という層が削れて薄くなり歯がしみてきたり、ひどいケースではなくなってしまいます。とても強い力がかかることによって歯の根っこが割れてしまうこともあります。また歯の神経が死んでしまったり、歯の根っこの先に炎症が起きることもあります。歯ぐきが腫れたり、かむと痛みが出たりもします。
その影響が及ぶのは自分の歯だけではありません。
虫歯の治療などで冠を被せることもありますが、硬いセラミックなどが割れてしまうこともありますし、インプラント(人工歯根)も壊れてしまう可能性もあります。
歯周病にかかっている歯に、さらにブラキシズムのよって大きな力がかかると、急に歯ぐきや歯を支える骨の状況が悪化することがあります。
具体的には、歯ぐきに急性の炎症が起きたり、歯を支える骨が溶けるのが速まってしまいます。
これはレントゲン写真によって確認することができます。
顎の関節や顔面の筋肉などにも悪影響を及ぼします。
頭痛や肩こりなどの症状と関係していることもあります。
顎関節症(顎の痛みや炎症)、口のまわりの筋肉の痛み、顎のズレ、顔面の変形、頭痛・肩こりなどを引き起こすこともあります。
【ブラキシズムの治療】
ブラキシズムの治療で、特に寝ているときのブラキシズムに特化したものがスプリント治療です。
一般的にはこちらの治療を行います。
透明なマウスピースを装着することで上下の歯が直接当たらないようにして、歯や歯ぐき、また顎の関節に負担がかかるのを軽減していく方法です。日中の食いしばりが多い場合には、日中の装着をおすすめすることもあります。
またストレスやカフェイン、アルコールなどによってもブラキシズムが起こることがあります。
直接お話を聞いたり、口の中の状態を確認することによってブラキシズムを悪化させる要因を特定し、改善するように促すことができます。
【OCEAN歯科からのメッセージ】
なにげなくしている歯ぎしりや食いしばりが、どのような影響を与えているかを知ることは大事なことです。
もし歯ぎしりや食いしばりをしていたり、その兆候があるなら、目に見えないところに問題が潜んでいる可能性もあります。
日中、何かに集中しているとき、パソコンやスマートフォンなどを操作しているときも無意識にかみしめていることも多くあります。
寝る前にリラックスするように軽くストレッチをしたり、ゆっくりと腹式呼吸をして心とからだをリラックスさせてストレスを軽くすることも大切です。睡眠の質を上げるためにも、過度な飲酒やカフェインの摂りすぎなどご自分で改善できることもあります。
まずはブラキシズムがどの程度、口の中に影響を与えているかを確認していくことから始めましょう。