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みなさんにとっての歯は、つるんとして白く、歯ぐきの上にあるイメージでしょうか。
実際の歯のなかは、何層にも分かれていて、見えている白い歯の部分のほかにもしっかりと支える根っこがあります。
歯の構造が分かると、むし歯はどうして小さいうちに治療していた方がいいのかもよく分かります。自分の歯を大切にしていくためにも歯の構造を知っておきましょう。
(1)むし歯になったらどうなるのか?
むし歯になったとき、冷たい水を口に含むと歯がズキンとしみることがあります。
もっとひどくなると、歯が壊れてしまい、壊れた歯のなかには赤い血のような塊が見えることがあります。
これは歯の中にある神経や血管などが入っている歯髄という組織です。一般的に歯の神経と言われているところですが、2つの層で守られています。エナメル質と象牙質という層です。
【エナメル質】
一つは一番外側にあるエナメル質というとても硬い層です。人間のからだのなかで一番硬い組織で、おせんべいやクッキーなどもバリバリ食べることができるのはエナメル質があるおかげなのです。
どれくらい硬いかというと、エナメル質を削るためには宝石で知られているダイヤモンドで削らないといけないくらいです。
ダイヤモンドは世界で一番硬い石などと評されることもありますよね。
そんなに硬くて丈夫なエナメル質ですが、むし歯菌が出す酸やすっぱい食べものや飲みものが苦手で、ずっと酸に触れていると溶けはじめてしまいます。
だから「歯をみがいて口の中をきれいにして、フッ素でエナメル質をさらに丈夫にする」のはとても大事なことなんです。
毎日しっかりかんで食べても歯が壊れないのは、エナメル質がリン酸カルシウムという結晶がジグソーパズルのようにギッシリと詰まってできていて、とても丈夫な構造をしているおかげなのです。
【象牙質】
エナメル質と歯髄の間にあるのが象牙質という層です。象牙質は痛みなどの感覚をキャッチするセンサーの役割を果たしています。
象牙質はエナメル質というとても硬い層で覆われているときは大丈夫なのですが、むし歯菌の出す酸によってエナメル質が溶けてしまうと象牙質がむき出しになってしまいます。
象牙質は歯の本体である歯髄とつながっているため、むき出しになった象牙質にばい菌が入ったり刺激が加わると「緊急事態!」というサインが出ます。しみたり痛んだりするのはこの刺激によるものなのです。
むし歯がしみたり痛んだまま放置してしまうと、象牙質につながった歯髄もずっとばい菌の攻撃や外からの刺激を受けている状態です。ですので、歯髄がダメになって歯が死んでしまいます。
むし歯がひどくならないうちに治療するというのは、早く治療することによって歯髄を助けてあげることができるからなのです。
(2)歯はどうやって支えられているのか?
歯は見えている部分だけではなく、歯ぐきの中にも根っこがあります。
そしてその根っこを支えている組織もあるのです。
【歯の根っこ(歯根)】
ご飯を食べるときにグッとかんでも歯が揺れないのは、歯の根っこがガッチリと支えてくれているからです。普段は歯ぐき(歯肉)に隠れて見えませんが、歯の根っこは大きな木の根と一緒です。
普段目にするのは、土から上の木の幹や葉っぱですが、大きな木を支えているのは土の中に広がった根っこです。台風や冬の寒さにも耐えてくれるように、さまざまな刺激に耐えてくれます。
根っこの本数や長さは歯の種類によって違います。
たとえば、前歯の根っこは細く1本です。しかし、硬いお肉もかみちぎることのできる犬歯の根っこは、前歯のなかでは1番太くて長く丈夫にできています。奥歯の根っこは2~3本あり、食べものをすりつぶすときの横からの強い力も安定してガッチリと受け止めてくれます。
もしもむし歯が広がって歯の根っこまで壊してしまうと、詰め物をしたりかぶせものをしても、歯は元通りの力をなかなか発揮することはできません。歯の根っこは、食事をよくかんで美味しく食べるための縁の下の力持ちです。普段、見ることはできませんが大事な役割を果たしているのです。また、歯の根っこが傷むと、強い力を支えることができずに歯が割れたり折れたりしやすくなります。その結果、歯を失くしてしまうことになりかねません。
むし歯になったら小さいうちに治すことはとても重要なのです。
【骨の中に植わっている歯】
歯の根っこを見ると、ピンク色の歯ぐき(歯肉)に覆われています。しかし歯ぐきは歯を支える役目はしていないのです。
歯を支えているのは歯ぐきの下にある歯槽骨という骨です。おせんべいなどの硬いものを食べても歯が倒れないのは、この骨が歯の根っこ(歯根)の周りをしっかりと固めているからです。
高いビルなどをイメージしてみると分かりますが、ビルが倒れないために地下部分にはしっかりとした土台があって、土台の周りをコンクリートなどでしっかりと固めています。
口の中の歯も同様で、歯ぐきの下の骨が歯の根っこをしっかりと固めているから硬いものを食べても大丈夫なのです。
【歯の根っこの周り】
歯は骨の中に植わっていますが、この2つの間には歯根膜という膜があり、歯と骨をつをつなぐ役割を果たします。この膜は2つをつなぐだけでなく、ハンモックのように歯に加わる力を和らげてくれます。そのおかげでかんだり、食いしばったりしても、その力が直接骨や脳に響かないのです。
歯根膜は強い糸でできていて、歯の根っこが骨から抜けないようにつないでいます。
歯や骨を作ったり壊したりする細胞や、血管、神経も含まれています。膜の骨側では骨を作る細胞がありますし、歯の側では歯のセメント質という部分を作る細胞があります。
転んで歯を打ったりして抜けてしまったときなどは、この歯根膜が生きているかがとても重要になるなど、普段目で見ることはできないですが、とても重要な組織なのです。
また歯根膜は太い神経につながっていて、食べものをかんだ情報が、脳の「やる気」「考える力」「記憶」に関係する場所を刺激することも分かっています。
かむことが元気に生きることにつながっているのです。このようなセンサーが歯根膜のなかにあるこので、歯を健康に保つことが元気に生きることに直結していることも分かりますね。
(3)歯の種類と役割
歯にはいろんな種類と役割がありますが、それは歯の形によって異なります。
歯の形にはきちんとした理由があって、すべてがそろってバランスよく食事ができるのです。
【歯の形】
歯の形は場所によって異なり、それぞれに役割があります。
前歯4本は食べものをかみ切るように鋭くなっていて切歯と呼びます。その横にあるのが犬歯や糸切り歯とも呼ばれる歯です。お肉などの硬いものをかみちぎるときに使います。人間の前歯は肉食動物の歯と似ていて、特に肉食動物のキバは人間だと犬歯に相当します。
奥歯は食べものをすりつぶすことができ、臼歯と呼びます。草食動物の歯に似ていて、臼のような形をしています。馬やヤギは一日中草を食んでいますよね。奥歯が臼のような形をしているので、草などの繊維をすりつぶすのに適しているのです。一方、肉食動物は引き裂いた肉をすりつぶすことはできないため、丸飲みしています。
人間は雑食なので、肉も野菜も食べます。そのため、人間の口の中は肉食動物と草食動物に似た歯がバランスよく入っているのです。いろんな形態の食べものが食べられるのはそのためなのです。
〈OCEAN歯科からのメッセージ〉
歯と一言でいっても小さな構造のなかにはいろんな組織があり、それらが密接につながって私たちはいろんな形状のものをかんだり、栄養として取り込むことができるのです。
「1本くらい歯がなくなってもいいや」ではなく、「大事な機能の一つが失われてしまう」という意識を持っていれば、口の中の健康に向き合う姿勢も変わります。
持って生まれた歯を大事にしながら、口の健康や全身の健康を保ってきましょう。