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乳歯の前歯などにむし歯ができると、歯の間が黒くなったり穴が開いたり、笑ったときに目についたり、見た目にも感じの良いものではありません。
また、乳歯の奥歯が大きなむし歯になると、冷たい飲み物を飲んだときや食べものを食べるときに痛むようになってきます。食事が楽しくなくなることや、偏食のきっかけになってしまったり、口臭の原因にもなります。
ひどいときには痛くて食べられずに食事の量も減ってしまいます。
むし歯がもっと重症化すると、乳歯が抜けてしまったり、抜かないといけないようなこともあります。
そのような状態まで放っておくと、乳歯の後から生えてきた永久歯の色が茶色や黒色に変わったり、かたちが本来の永久歯とはちがう変なかたちになって生えてくることがあります。
また、乳歯が早く抜けてしまってその隣の歯が倒れてきてしまうと、将来生えてくるはずの永久歯が生える場所が生えるスペースがなくなり、永久歯が生えにくくなります。
歯並びがガタガタになる原因にもなったりします。
このように、乳歯がむし歯になるとさまざまな不都合なことが起き、お子さんの将来の歯の健康や歯並びにも大きな影響を与えてしまいます。
ちょっと切った傷や、すれてしまってできた傷は、ある程度の期間が経つと自然にもとどおりに治りますが、
一度できてしまったむし歯は自然には治りません。
むし歯菌でこわされた歯の色やかたちは自然ともとには戻りません。
ですので、むし歯には予防が一番大切なのです。
むし歯はばい菌(細菌)の感染によって起きます。
つまり、むし歯は細菌が作るのです。
この細菌の種類には
・ミュータンス菌
・乳酸桿菌
と言われるものがあります。
この細菌から歯を守るため、以下の4つのことが重要になってきます。
①細菌が歯のまわりにつかないようにする
・歯ブラシによる歯みがき
・デンタルフロスや歯間ブラシなどでの細かいところもみがく
②細菌の活動を抑える、細菌を殺す
・甘いものや糖分が含まれるものを控える
・洗口剤を使用する
③最近のつくる「酸」に抵抗できる歯の質にしていく
・フッ素などを使用していくことで歯の質が強化されます
④シーラントによって奥歯の溝を塞ぐ
奥歯の溝の深いところは歯ブラシが届きません。
その部分をシーラントという薄いプラスチックで奥歯の溝を塞いで、虫歯になるのを予防することができます。
むし歯を予防するために一番大切なことは歯みがきです。
そしてその目的は、歯垢(プラーク)という歯の表面についた汚れをきれいにとることです。
毎日歯みがきをしていると言っても、ただ口の中に入れた歯ブラシで考えなしに歯をみがけば良いというわけではありません。
プラークがたまりやすい場所をきちんと理解し、そこをめがけてきれいにみがくことで、歯みがきの時間も短縮され、効果もアップします。
プラークは歯と歯ぐきの境目や歯と歯の間に多くたまる傾向にあります。
歯ブラシのときは歯の表面もそうですが、特にこのような部位も気をつけてみがいていきましょう。
(仕上げみがき)
子どもは10歳くらいまで、自分で歯みがきをしても自分の歯を十分きれいにすることはできません。
自分で自分の歯をみがいて、きれいにするんだという気持ちを育てるのは大切なことですが、自分で隅々までみがける時期までは保護者の方が仕上げみがきをしていきましょう。
①歯をみがく体勢、みがき方
歯みがきをできるだけ短い時間で終わらせるには、どういう状態でみがくかも大切なポイントです。
子どもを仰向きに寝かせて、保護者の方が子どもの頭の上からのぞきこむように歯みがきするのが良いかと思います。
あまりに大きな口を開けさせると、頬がつっぱり、奥歯の後方まで歯ブラシが行き届きません。奥歯をみがくときは、イーっと歯を噛ませた状態で唇を手で持ち上げてきちんと奥まで見ながらみがくのが良いでしょう。
どこの歯に歯ブラシが当たっているかを確認しながら、1本の歯につき、4~5回歯ブラシでゴシゴシみがくように意識するのも大切です。
②歯ブラシの選び方
ブラシの毛はあまりに硬いと歯ぐきを傷つけますし、痛いです。
硬さは「普通」のものを選びましょう。
お子さんに持たせるものと仕上げみがき用の歯ブラシは分け、
仕上げみがき用は
・植毛部の長さは歯2本分くらいの幅
・柄の部分は保護者の方が持ちやすく、やや広めのもの
などが望ましいでしょう。
横から見て、毛先が広がってきたら歯ブラシの交換時期です。
1か月に1度くらいの頻度で交換しましょう。
③デンタルフロス、歯みがき粉、フッ素などの取り入れ方
*デンタルフロス*
歯と歯の間は歯ブラシではみがくことはできません。
デンタルフロスを使って、隙間をみがいていきましょう。
使用方法としては、約30センチくらいに切り、両手の人差し指か中指に巻き付けて使います。滑らせるようにして歯と歯の間にすべりこませ、両側の歯の面にフロスを沿わせて汚れをかき出します。
ワックスがついているものと、ついていないものがありますが、乳歯の場合はどちらでも構いません。
ホルダー付きのデンタルフロスの方が使いやすかったら、そちらでも大丈夫です。
経済的なのは指に巻き付けるタイプでしょう。
積極的に使う部位としては、奥歯の歯と歯の間です。
保護者の方が思うよりも食べものなどが奥歯の隙間につまっています。ずっと食べかすなどがつまっていると痛いですし、歯ぐきまで炎症をきたしていることもあります。
また、気づかないうちに大きなむし歯を作ってしまうこともあります。
1日に1回は使用するようにしていきましょう。
前歯に隙間がある場合は歯ブラシにてみがけるため、フロスを使わずにきれいにみがけます。ですが、隙間がなく歯の間がつまっている場合はフロスを使用し、きれいにしていきましょう。
*歯みがき粉*
いろんな種類のものがありますが、香料などの刺激が少なく、フッ素が配合されたものがいいでしょう。
つける量は年齢によりさまざまです。
泡でブクブクにならない程度の量がおすすめです。
特にフッ素入りにものは、種類によって推奨されている量を守りましょう。
*フッ素*
むし歯を予防するために、とても有効な手段です。
3~6か月ごとに歯科医院で塗布を受けると効果が高まります。
(フッ素の3つの効果)
・エナメル質を強くする
歯の表面にあるエナメル質という結晶を、フッ素が化学的に強くすることができます。
また酸に対する抵抗性を増やします。
・歯の再石灰化を促進する
エナメル質が酸によって溶け始めても(脱灰といい、カルシウムやリンが失われます)、フッ素が歯の石灰化(失われたカルシウム、リンが再び戻っていきます)を促進して、失われたカルシウムやリンをおぎなってくれます。
・細菌の活動を抑制する
フッ素イオンには抗菌作用があり、むし歯菌の活動を抑制します
またフッ素が入った液体で口の中をブクブクうがいをして、ご自宅でもフッ素によるむし歯予防をすることも可能です。3歳以上のうがいができるお子さんが対象です。
(フッ素入り歯みがき粉について)
フッ素入りの歯みがき粉にはごく微量のフッ素が含まれており、むし歯予防には有効です。
フッ素は自然界にあるイオンです。
摂取量が多くなると、歯に白色の斑点が出てきてしまったり、歯をつくる過程でも影響を与えたりもします。しかし、歯みがき粉に入っているフッ素の量は、適量を守っている限りそのような影響が出る心配はありません。
年齢により使用するフッ素入り歯みがき粉の種類も濃度も異なります。
もしご心配なときは、何をどのくらい使っていいか、お気軽にご相談ください。
乳歯であっても、むし歯になっていいことは一つもありません。
むし歯にならないためにはご自宅での毎日のケアはとても重要です。
歯ブラシの方法や注意点、使用する道具など、歯科医院でお手伝いできることはたくさんあります。
定期検診ではむし歯が大きくなる前の小さな変化に気づくこともできます。
むし歯予防のためにも、定期的な検診とフッ素塗布やシーラントなどの予防処置をおすすめします。